« 100歳が書いた戦争 「孫たちへの証言」第20集 | トップページ | 文芸時評・7月(毎日新聞)沼野充義 »

2007年8月12日 (日)

小泉今日子の書評=「夏のコワーイ 1冊」

読売新聞の読書委員が選ぶ「夏のコワーイ 一冊」特集(8月12日付)で小泉今日子は、小川未明「赤い蝋燭と人魚」(絵・酒井駒子=偕成社)を選び紹介している。曰く、
『出会いは小学校の図書室だった。本棚に古くてボロボロになった本を見つけた。「赤い蝋燭と人魚」。ロウソクって漢字で書くとなんだかおどろおどろしいな、と思いながら読み始めた。そこまでの記憶はいやに鮮明なのに、私は物語の内容を全く覚えていなかった。
つい最近、再び出会った「赤い蝋燭と人魚」は大好きな絵本作家、酒井駒子さんの装画だった。我が子を思う人魚の願い、幼い人魚の孤独、人間達の欲や差別、そして海の怒り。夜の、暗くて深い海の底に引きずり込まれるような怖さを感じる悲しい物語だった。小学生だった私には、この悲しみを受け止めることが出来なかったから、今まで心の底に封印していたのかもしれない。』

この書評、枚数制限のなかで、自分の文体とリズムをしっかり会得したいい文章である。おそらく他にも多量に書いているのではないだろうか。回数を重ねるごとに、心技体と巧くなっていくのがわかるのは、読んでいて楽しい。

小川未明の童話は、有名だから出版されるが、現在、素人がこのような作品を書いても出版されないかもしれない。それほど人間の心の闇を描いてトーンが暗い。本来は純文学なのだ。他に、童話作家で純文学なのに、新美南吉がいる。彼は、本心は純文学作家をめざしていたのだと思う。

|

« 100歳が書いた戦争 「孫たちへの証言」第20集 | トップページ | 文芸時評・7月(毎日新聞)沼野充義 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 100歳が書いた戦争 「孫たちへの証言」第20集 | トップページ | 文芸時評・7月(毎日新聞)沼野充義 »