文芸時評7月・川村湊(毎日新聞)
《対象作品》佐伯一麦「俺」(新潮)/朝比奈あすか「小さな甲羅」(群像)/GraveGrinder「アタシ解体新書」(群像)/中村文則「夜のざわめき」(文学界)。《注目の1冊》佐伯一麦「ノルゲ」(講談社)。(毎日新聞7月26日付け夕刊)
《対象作品》佐伯一麦「俺」(新潮)/朝比奈あすか「小さな甲羅」(群像)/GraveGrinder「アタシ解体新書」(群像)/中村文則「夜のざわめき」(文学界)。《注目の1冊》佐伯一麦「ノルゲ」(講談社)。(毎日新聞7月26日付け夕刊)
【「本卦還り」白石すみほ】
60歳を過ぎた女性が、高校生時代の同窓会に出席する。一度目の同窓会には、青春時代に主人公から彼氏を奪った女性が、派手な生活の様子を見せびらかすように、示威行動的な言動で、出席者の目を奪ったものだった。この彼女こそが、当時一度は愛を交わしたことのある主人公の恋人、中村勘太郎を奪い「もう、あたしのものだから」と宣言した女だったのだ。今年はしかし、彼女は同窓会に姿を見せなかった。すると、かつて主人公を裏切った勘太郎が接近してくる。そして青春時代の情を交わすところで終わる。黄昏に入る前に奇妙な明るい時間を思わせる。洗練されたところのある巧い作品である。
【「娘のつぶやき」古倉節子】
童話。娘からみた家庭での父親の振る舞いに感じる違和感を、ユーモラスに描く。父親をただ批判的に描くことなく、家庭的な温かさのなかに、表現してるのがおおらかで、面白い。
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の新訳、亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫が売れている。第1巻の11刷、71.000部を筆頭に全5巻で累計23万部に達した。新訳は、「驚くほど自然に読むことができる」と沼野充義教授も絶賛という(読売新聞7月24日付け・待田晋哉記者)。
芥川賞作家でロック歌手の町田康(こう)さん(45)が、千葉県内を車で移動中にロックギタリストの布袋寅泰(ほてい・ともやす)さん(45)に顔などを殴られ、けがを負ったとして、同県警君津署に被害届を提出していたことが25日、わかった。
町田さんによると、2人の間には参加するロックバンドの活動方針について意見の食い違いがあったといい、同署は布袋さんから任意で事情を聞いている。
町田さんによると、2人は6月13日夜から同県富津市内にある布袋さんの別荘に行き、翌14日未明に車に同乗して東京に戻る途中、布袋さんが殴りかかってきたという。町田さんは同月18日、顔や上半身に2週間のけがを負ったという内容の診断書を添えて、同署に被害届を提出した。[読売新聞社:2007年07月26日より]
【「神風特別攻撃隊と太平洋戦争」吉岡昌昭】
非常に優れた評論である。自分が、これまで読んできた同人誌に掲載された太平洋戦争論という観点からすると、これほど優れた視点のものを読んだことがない。日本では大東亜戦争といっていたが、太平洋戦争が一般的になりつつある。この戦争の始まりから、終わりまでの経過を書いたもの。
作者は、この戦争が、外交交渉や指導者の適切な判断、行動があれば、しなくてもよいものではなかったか?それが、なぜ避けることができなかったのか?の疑問に答を出す方向で、経過を観察、見つめている。
軍神扱いされている山本五十六への視線も冷静である。共感できる。
戦争に関するものは、これまで感情的になったり、反省したり、さまざまな視点で描かれているが、この評論のように何故起きたのか? どうすれば戦争というものが防げるのか、という問題意識から描かれたものはそう多くない。
日本人の国民性なのか、それとも人間性なのかわからないが、とにかく軍部、官僚にすべてを委ねてしまう国民意識の特徴を鋭く指摘している。
これを読んで、近年の経験を思い出した。ある年の仕事帰りのある夜、街に人影が少なく、いつもより奇妙に静かであった。マンションや家々の窓には明かりがついていて、時々、それらの窓から歓声が聞こえる。家に帰って見ると、自分の家の者までが、テレビ画面に見入っている。
サッカーのワールドカップの日本チームの試合の日だった。新聞もテレビも、それが人生のすべてであるかのように煽りたてると、まるでそれを望むように乗ってしまう人々に、ある不気味さを感じた。情報操作に抵抗するどころが、待ち受けているその心理が、戦争でもなんでも、勢いで走らせてしまうのではないかと、いやな気がしたのだった。
読売新聞7月22日の女優・小泉今日子書評は筒井ともみ「おいしい庭」(光文社)。作品については、作者の「筒井さんは、そんな心の庭を手入れしながらカッコイイ大人になったのだと、このエッセイを読んで思った。私の庭は時々大人になりきれない気持ちの隠し場所になってしまう。だから泣きたくなる」ーーと書く。
今回は表現力豊かで、はじまりが
「私のマンションの部屋には小さな庭がついている。そこが気に入って住んでいる。日当たりが良く、土も良いらしく、たいして世話をしていないのに植物たちは元気に花を咲かせてくれる。この庭の草むしりをしてる時、私は自分の心の奥にひっそりと眠る少女心を手入れしているような気分になり、いつも少し泣きたくなる」である。
出だしから、終わりまで見事な仕上がり。舞台の一幕をみせるように、こころの揺らぎを表現する。作家になってしまうかもね、この女優さんは。
【「本卦還り」白石すみほ】
60歳を過ぎた女性が、高校生時代の同窓会に出席する。一度目の同窓会には、青春時代に主人公から彼氏を奪った女性が、派手な生活の様子を見せびらかすように、示威行動的な言動で、出席者の目を奪ったものだった。この彼女こそが、当時一度は愛を交わしたことのある主人公の恋人、中村勘太郎を奪い「もう、あたしのものだから」と宣言した女だったのだ。今年はしかし、彼女は同窓会に姿を見せなかった。すると、かつて主人公を裏切った勘太郎が接近してくる。そして青春時代の情を交わすところで終わる。黄昏に入る前の奇妙な明るい時間帯を思わせる。洗練されたところのある巧い作品である。
【「娘のつぶやき」古倉節子】
童話。娘からみた家庭での父親の振る舞いに感じる違和感を、ユーモラスに描く。父親をただ批判的に描くことなく、家庭的な温かさのなかに、表現してるのがおおらかで、面白い。
先週、大きく報じられた小泉今日子(41)と亀梨和也(21)のパリ婚前旅行。20歳も年が離れたこのカップルがいずれ結婚する――。こんなふうに思っている人も多いが、小泉にはまったくその気がないようだ。
小泉は亀梨との恋愛にウツツを抜かしているわけでもない。昨年は連続ドラマ「セーラー服と機関銃」(TBS)に出演。今年は「ユメ十夜」「さくらん」「東京タワー」の3本の映画に顔を出し、11月に「やじきた道中 てれすこ」と「転々」の2本の映画が公開される。また、7月と8月の2カ月でかつてのオリジナルアルバム17タイトルがリイシュー(再販)される。
「小泉はやりたい仕事をやりながら、恋人と好きな時に会う自由な生活スタイルを考えている。再婚はないと思う」(芸能リポーター)
【2007年7月17日付 ゲンダイネット より】
法政大学国文学会は、「法政文芸」3号を刊行した。巻頭エッセイに、文芸評論家・秋山駿氏の「東京に悪の華を」がある。内容は昔、上海を魔都としたが、現在は東京が魔都であるとし、しかしながらボードレールの「悪の華」のような退廃美としてそれをとらえる文学がないと嘆く。懐かしくも、もっともな橋である。
最後に詩人ランボーの「ああ、季節よ、城よ/無疵なこころがどこにある。」が好きだという。
これは「幸福」という作品だが、自分はたしか、「ああ、歳月よ、あこがれよ/誰か心に疵のなき?」とかで、堀口大学の訳がなつかしく思いだされた。ランボーには、たしかに詩文学のエキスがある。
特集は、「ヤングアダルト」で、児童文学の作家、笹生陽子さんへのインタビューが面白い。書店にヤングアダルト(YA)のジャンルが出来たので、「楽園のつくりかた」という作品が良く売れたという。実情として、大手出版社の賞をとって、最初のデビュー作で、どのくらい出るのかという、質問に「私の場合4000部でした。半年から1年もかけて、書き直しに時間をかけて、結局お金は30万から50万位が印税で入って、それで終わり。」その後普通は増刷もないし、次の依頼がこない。それが普通だという。
文芸文化としての作家としてやるには、他の仕事で収入を得ながらやらないと無理だという実態がしめされている。
【「老いの花篭」高山柳】
老いると転びやすい。作者が路上や散歩でよく転ぶようになったことから、嫁が介護予防運動していることから、その経験をレポートを作成し、手を入れてあげたりする出来事が描かれる。筆捌きが巧い。
【「雑踏の中で」高山柳】
駅の切符販売機の前で、知らない老人から、電車賃をくれないかと、せびられる。東京では、よくこういう電車賃を見知らぬ人に無心する人々が増えた。結局、作者は応じて金を上げる。この時の作者の心理が描かれている。短いが、この作品の方が文芸的に仕上がっている。
【「馬を見に」田村加寿子】
60代の作者が、ネットで「ばんえい競馬」情報をみたのをきっかけに、少女時代に母親が、主人公を連れ子に結婚。相手の義父も子がいた。その生活のなかで、家に農耕馬がいたので、就職したさきの仕事仲間が馬を見たがり、訪問してくる。そのときに、これまで自分の子供だけを可愛がり、素っ気ない態度をしていた義父が、彼女の上役や同僚を感じよくもてなしてくれる。作中に「それは、芙由子の若かった時代の、そして幸せとも不幸とも断言できない狭間での馬めぐる話だった」とある、そのままの作品である。複雑な家族関係に挟まれて、心に滞る微妙な心理を見事に描く。簡単に書いたように読めるが、筆力は相当なものがある。
【「鰻とマスカット」石川久仁子】
老いた昌江が、過去の時間を再体験するため、住んでいた熱海を訪ねて、過去の風景と現在までの変遷を語る。危うい筆さばきのように召せて、短編「失われた時を求めて」風にまとめる。
どの作品も老人の話で、まさに老人雑誌。若者には異境の世界ばかりであろう。これを紹介する僕もまた老人の部類に入る。だから読み通せるのかも知れない。でも、この同人のみなさん、表現の筆力はたしか。
【「看護日誌」仁井繁】
長年連れ添った妻の病気看護から死するまでの記録。妻であり母である一人の市民の死が、その無念と悲嘆がずしりとした重みを持って伝わってくる。私の記録でありながら、人間すべてに普遍性をもつ作品。
【「ワン公の死」仁井繁】
妻の死を追うように死んでいった犬。死を軸に生ることの価値を意味づけている。死に普通に向き合うことで、同人誌ならではの文芸味が発揮されている。
【「少年」孟七三】
昭和初めの頃の瀬戸内の島の学校の記憶と、東京生活と戦争での空襲の話。個人の中の大いなる記憶である。壺井栄だったか「24の瞳」の舞台のイメージがある。
【「漢江」田川肇】
戦前、朝鮮半島で過ごした作者の郷愁の記憶。川で洗濯していた主婦が、落ちておぼれる描写が光る。何気ない生活のなかに死が潜んでいるこの世界を感じさせ、生きていることの貴重さを思わせる。
[《対象作品》「震洋の夏」結城忍(「高知文学」33号/高知市)、「異郷」藤野秀樹、「茶の間の柱時計」難波田節子(以上「季刊 遠近」31号/東京都)、「異邦人」松本文世(「南風」21号/福岡市)、「過日」上坂高生、「夕陽」昆道子(以上「碑」88号/横浜市)、「龍の舌」十河順一郎(「木曜日」23号/東京都)、「北京の日本人たち」松原栄(「南涛文学」22号/浦添市)、「歌のゆくえ」森岡久元、「ナチュラル・メイク」浅田厚美、「雪のふるまち」和田浩明(以上「別冊關學文藝」34号/西宮市)、「空中田園」小暮照(「原点」94号/松山市)、「背負う言葉」岡田晃、「笑顔の天使」氏家ユウタ(以上「AMAZON」423号/宝塚市)、「自在の輪」諸井学、「白墨の滴」大塚高誉(以上「播火」63号/姫路市)、講演記録「小説を書くこと」吉村萬壱、「通天閣に跨がれて」津木林洋(以上「樹林」508号/大阪市)、「お引きずりの男」さこう祥二、「妻の一言」三階幸男(以上「小説図鑑」17号/横浜市)、「手」川野文勝、「優雅なる墓地」深井津音夫(以上「宇佐文学」42号/宇佐市)、「夢の女」庄司肇、「ぎぼしの家」村尾文(以上「文学街」235号/東京都)、「通り雨」遠藤昭己(「海」75号/四日市市)、「溜め池」新村苑子(「文芸驢馬」53号/東京都)、「幻想家族」青海静雄(「午前」81号/福岡市)、「人力車」久保輝巳(「龍舌蘭」170号/宮崎市)、「小さな宇宙」水澤葉子(「ぼんがら」25号/山形市)、「夢幻渓谷」水上ヤスコ(「あべの文学」5号/大阪市)、「ねこと部屋」陶山竜子(「孤帆」11号/小金井市)、「ホットハウス」吉永ケイト(「TEN」81号、名古屋市)、「羽ならし」垂水薫(「照葉樹」3号/久留米市)、「風物(やま)」花村守隆(「季節風」105号/国分寺市)
ベスト5は、「夕陽」昆道子、「通天閣に跨がれて」津木林洋、「異邦人」松本文世、「夢の女」庄司肇、「歌のゆくえ」森岡久元
続いて、
「週刊読書人」2007年7月13日・第2696号「文芸同人誌評」白川正芳筆
《対象作品》「雲の女」池田英之(「佐賀文学」24号)、「銀次郎の日記」青江由紀夫(「山音文学」111号)、「インタビュー 私小説は未来のために ドナルド・キーン」(「私小説研究」8号・法政大学大学院)、「重力のお友だち」よこい隆(「木曜日」23号)、「夜の散歩者」小島義徳(「文芸誌O」40号)、「斎王ものがたり」秋野信子(「多気文学」2号)、「小林秀雄の文学の思想」永田郁夫(「名古屋文学」24号)
(文芸同人雑誌愛案内掲示板・よこいさんまとめ)
バカボンの考えでは、自費出版社の事業は、高い安い、ぼられた等の不満があるとしても、約束の通りに本が出来たのなら、それで法的な問題が起きるという程のことか、疑わしいのではないか。自費出版をするだけなら、印刷業者に頼んでも良い。しかし、そうすると一般書店で本を売れない。そこで自費出版社で出版すれば、書店に並べられると考えて、そこに依頼するわけである。書店流通のためには図書コードISBNとJANコードのバーコードの取得が必要である。自費出版社に頼めば、それを附けてくれる。しかし、それは全国の書店に流通させる可能性をもっただけで、実際に流通するかどうかは別である。流通させるにはニッパンやトウハンなど流通組織に扱ってもらわないと出来ない。彼らが大手の有名出版社が大宣伝している有名本がひしめいているのに、名も知れぬ人の自費出版本を扱うということは至難のことである。また500部程度の本を全国書店にどうやって流通させるのか。都内とか、市内とかに限っても部数が少なすぎる。1000部ぐらいは欲しい。すると制作費が100万や200万では足りない。とすると、200万円前後の費用で本を出版したのであるなら、一部の限られた書店に並べる程度なのは明らかで、その範囲においては、詐欺とはいえないのではなかろうか。あとは費用が良心的か、あこぎであるかの程度問題のような気がする。向こうも儲からない事業などしないだけのことだ。自費出版にも経験が必要なのかも知れない。
介護後問題で、コムスンが金儲けで介護事業をしているのでけしからんという、意見がたくさん出た。それを言うなら、その人は損失を覚悟で介護事業をしたらいいではないか。ありもしない、存在し得ないことを前提に、いかにもそれが、正論のようなことをマスコミが煽るのも困ったものだ。だいたい、官僚は、介護事業の民営化をするときに、いかにも儲かると思わせる料金体制をつくって置いて、どっと民間業者が生まれたら、こんどは補助金を大幅にカットする法律をつくった。利益を出すには、不正請求をするしかない。するとそれを追及して、「ほらね、やっぱり国がやらないとだめですよ」と官僚は、天下り介護組織をつくり、国民の介護保険料を使い放題にする方向に動いているようだ。
ある政治家が、天下り禁止法案には、官僚が反対したから、あれは一歩前進だといっていたが、反対したのはポーズで、おそらく焼け太りのシステムを作ったのではないかとバカボンは思う。トロツキーは、「プロレタリア独裁政治の国民のためには、役人を選挙で選ぶようにしないと実現できない」といっていたが、独裁者スターリンに暗殺されてしまった。官僚を選挙で選ぶようにしないと官僚独裁国家は続く。
「出版された書籍は全国800の書店で販売される」などと説明され、共同出版をした滋賀県長浜市の元大学教授、吉田龍恵さん(77)ら3人と1法人、が出版費用を騙し取られたとして4日、大手自費出版会社「新風舎」(東京都港区)に、計763万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。
吉田さんらは02年10月から今年2月、自著の出版契約を同社と結び、約195万~約99万円を支払ったが、実際には一部の書店でしか販売されなかった。営業活動もほとんどしていなく、「書店に陳列されない可能性を故意に告げず、詐欺にあたる」と主張している。「新風舎」は、本の出版費用をすべて著者が負担する「自費出版」だけではなく、出版社側の費用を負担する「共同出版」を提唱し事業化している。同社は、06年の新刊書籍発行点数2788点で、業界トップという。(読売新聞・7月5日付より)。
《対象作品》「古本好きの奇癖と悲哀」唐戸民雄(「Pegada」6号/川崎市)、「餓鬼んちょ道長紫模様」吉田弘秋(「名古屋文学」24号/名古屋市)、「鬼が棲む」松岡三夫、「夜の海」葉山修平(以上「だりん」55号/船橋市)、「すすき」吉田洋三、「雑踏の流れ 老いてなお」三村毅(以上「播火」63号/姫路市)、「打ち掛けに寄せて」佳川文之緒、「色と空と」犬飼和雄(以上「CARABAN」10号/横浜市)、「情けないことばかり……」荒木武(「残党」25号/茅ヶ崎市)、「秘密」奥端秀彰(「孤帆」11号/小金井市)、「軍事郵便」赤松宜子(「原点」94号/松山市)、「室生犀星『抒情小曲集』の位置」佐藤伸宏(「詩界」250号/入間郡)、「黄枯茶の味」鈴木地蔵(「文游」26号/飯能市)、短歌・菱山登代子、同・瀧井昭男(以上「歌筵」17輯/横浜市)、三行詩・武田隆子(「りんごの木」15号/目黒区)、「明星の座 淑気堂に満つ」庵達雄、俳句・奈良文夫、同・三野勝(以上「群星」131号/越谷市)、鈴木亨追悼文・小山常子(「東京四季」92号/八王子市)、池田英之追悼特集(「佐賀文学」24号/神埼市)、井上郷追悼特集(「作文」194号/逗子市)《文芸同人誌案内掲示板・よこいさんのまとめ》
(毎日新聞6月27日夕刊)《対象作品》青来有一「てんばれん」(文学界)/玄月「眷族」(群像)/辻原登「チバシリ」(文学界)/桑井朋子「墓参記」(すばる)/同「妬ましい」(文学界)。《注目の一冊》青木淳悟「いい子は家で」(新潮社)。
(東京新聞6月27日夕刊)《対象作品》伊藤比呂美「とげ抜き地蔵縁起」(講談社)/対談=伊藤比呂美&津村佑子(群像)/青来有一「てんばれん」(文学界)/都甲幸治「村上春樹の知られざる顔」(文学界)/「プロレタリア文学の逆襲」(すばる)ほか。
(読売新聞7月1日付書評欄より)「子供の頃、テレビやマンガに出てくるヒーローに憧れた。………私もいつかそんなヒーローになってみたいと思っていたけれど、そのためになにもせずに現在に至る、と書く」。「男鹿あをによし」の主人公は、大学の研究室で働く、ヒーローには程遠いタイプの男。ところが奈良に左遷されてみると、そこの鹿や動物たちと話しできてしまう。そして動物たちから、人類を救うヒーローの一人に選ばれてしまう。
「読み始めたときは、突拍子もない話だと思っていた。でも、職員室で交される会話や、敵意剥き出しの女子高生の行動など、細かく散りばめられたエピソードが1800年前の謎にどんどん繋がり………この世界にのめりこんでしまった」と評して、好感度五つ☆の評価。
【「同じ森を見ている」藤田愛子】
神奈川県に住む高齢の女性が、同じマンションに住む若者と韓国の俳優尾挨拶のあるロードショーを東京まで見に行く話。若者は県の福祉関係の職場に勤めているので、女性には福祉的な発想があるらしいのだが、女性にはそれが、生活の重要なアクセントになっている。一種の萌え的な情念世界を描いて、それとなく、ものを思わせる作品。
【「叫び」畠山拓】
消防士と女性放火犯との関係を語る。たしか「くまえり」事件とかで、そのような女性が居た。物語にスピード感があり、面白く読めるが、反面、構成と細部に粗さが感じる。
【「『佳』第ⅩⅣ」島田貴美子】
大長編である。「佳」の娘が口蓋裂で生まれきたのを、手術で改善してきたが、思春期を迎え、娘はそれを苦にして悩む。その母親の気持ちを中心に描かれる。持続する筆力に敬意をひょうしたくなるが、文章力にたよって、構成や語り方が平板になっているのが気になった。
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