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2007年7月14日 (土)

「かいだん」第56号(東京・小金井市)作品紹介(2)

【「老いの花篭」高山柳】
 老いると転びやすい。作者が路上や散歩でよく転ぶようになったことから、嫁が介護予防運動していることから、その経験をレポートを作成し、手を入れてあげたりする出来事が描かれる。筆捌きが巧い。
【「雑踏の中で」高山柳】
 駅の切符販売機の前で、知らない老人から、電車賃をくれないかと、せびられる。東京では、よくこういう電車賃を見知らぬ人に無心する人々が増えた。結局、作者は応じて金を上げる。この時の作者の心理が描かれている。短いが、この作品の方が文芸的に仕上がっている。

【「馬を見に」田村加寿子】
60代の作者が、ネットで「ばんえい競馬」情報をみたのをきっかけに、少女時代に母親が、主人公を連れ子に結婚。相手の義父も子がいた。その生活のなかで、家に農耕馬がいたので、就職したさきの仕事仲間が馬を見たがり、訪問してくる。そのときに、これまで自分の子供だけを可愛がり、素っ気ない態度をしていた義父が、彼女の上役や同僚を感じよくもてなしてくれる。作中に「それは、芙由子の若かった時代の、そして幸せとも不幸とも断言できない狭間での馬めぐる話だった」とある、そのままの作品である。複雑な家族関係に挟まれて、心に滞る微妙な心理を見事に描く。簡単に書いたように読めるが、筆力は相当なものがある。

【「鰻とマスカット」石川久仁子】
老いた昌江が、過去の時間を再体験するため、住んでいた熱海を訪ねて、過去の風景と現在までの変遷を語る。危うい筆さばきのように召せて、短編「失われた時を求めて」風にまとめる。

 どの作品も老人の話で、まさに老人雑誌。若者には異境の世界ばかりであろう。これを紹介する僕もまた老人の部類に入る。だから読み通せるのかも知れない。でも、この同人のみなさん、表現の筆力はたしか。

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