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2007年6月21日 (木)

文芸中部」第75号・作品紹介(2)

【随筆「クルターク『カフカ断章』作品二十四」堀井清】
ハンガリーの現代音楽作曲家・クルターク「カフカ断章」二十四という音楽が存在するという。まったく知らなかったので驚きをもって読んだ。しかも筆者は、本格的オーディオ装置を愛好しているらしい。ヘッドホンで聴くことに抵抗し、体のそとから感じる音楽を本物とする確信には、共感するものがあある。また、芥川賞作品「ひとり日和」について、長くて同人誌小説を読むようだ、という感想が面白い。身辺雑事から離れていないところが、そうおもわせるのであろう。
【「占い師」堀井清】
家庭から見放されたか、世捨て人になったような高齢者らしい「私」が、見知らぬ町を彷徨する。妻の運転する自動車の助手席に居たときに、私は横からそのハンドル操作を邪魔して事故を誘発するイメージを抱いた途端に、その気配を察知した妻に、「何を考えているの」と察知されてしまうエピソードがある。また、自殺した友人のことも語られる。とすると、家族の姿も友人も「私」の分身として描かれているようだ。街を彷徨いながら、見知らぬ人々を観察するが、それが自分の分身としての解釈につながるところがある。基本テーマは人の抱える根源的な孤独である。文章がなめらかで、肌触りのよさを感じさせる。

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