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2007年6月28日 (木)

「構想」42号(長野県)作品紹介(1)

【「彼岸独白」岩谷征捷】
作者が、夫の不実に悩ませられるTという女性60代女性について、モデルにして作品を書こうと思っている矢先に、女性は自死してしまう。その女性の死せる魂の独白として、その心境を綴る。怨みの情念を単なる独りの女性だけの問題としてではなく、人間的な普遍的情念になるまで、丁寧に美的に描かれている。社会風潮的には、ありふれた境遇を描きながら、いかにも繊細な筆致で文学の世界が構築されている。
【「じょうこじさん」崎村裕】
信州のお寺の住職さんの境遇と人生が、エピソードを交えて描かれている。普段知ることのない仏教寺と檀家の関係がなんとなくユーモラスに描かれている。浄土真宗なので、禅僧と違って人間的であり、この世界の世渡りのすべなどもリアルである。住職が脳卒中の症状で一度倒れているのに、周囲の人の対応が悪いために死んでしまった。葬儀の時に、身内の者が村人を非難して終る。それが独特の余韻になっている。

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