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2007年5月24日 (木)

 陳千武詩集・「暗幕の形象」(思潮社)より(1)

  紹介者 江 素瑛
 台湾の詩人陳千武さんは、1922年生まれ。現在も台湾に住み詩作をする。1940年日本の植民地政策で、生徒の皇民化による改姓名に反対したため、1ヶ月の監禁をうける。日本語文化を学び、間もなく日本語詩集、日本語短編小説を書く。日本兵に志願するなかで日本文化の影響を受けた。日本でも著名な詩人である。

「命の戟」は1 誕生、2 幼き日、3 運命の影、4 歪んだ表情、5 死に臨む、6 名は永遠に、と六章に成す。1946-1951年に伝記の形で書かれた作品である。清国、日本、中国国民党を経て、常に外来人に統治され、継子のような台湾。とくにその時代を生き抜いた台湾老人達は、台湾人総統李登輝が誕生するまでに、悲しい目で台湾の奈落を嘆いている。
 「死に臨む」は、特別志願兵にさせられた若い陳千武さんは、「全く賢い愚人になる」、と洞察したような描写が現れますが、同詩集に収録された1941-1942年に書かれた「瞳を凝らしてー大肚山にて」では、

(中略)ーー瞳を凝らして思う/麦藁の戦闘帽で/真白なハンカチのやうな/空の白い雲を掬い日をー

 大肚山の山頂付近に日本軍が作った地下要塞に志願兵予備訓練を受けた陳さんは、台湾人を皇民化に企む当時、親友の中田 襄さんと、同じように栄光な戦争の夢を見たのかも知れません。

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