「文―BUN」第4号・立命館大学文芸創作同好会(3)
【「隣人を愛せよ」高村綾】
「萌え」や「ボーイズラブ」「やおい」の世界のオタク族の私が、井川さんという素敵な人にめぐり合い、どきどきして接近してみるとその人もオタクだった。専門用語に「注」を入れて、あっさり田中康夫を乗り越えているのが面白い。生活のなかに幻想を組み込んで暮らす、というか暮らさざるを得ないというか、若者の現在をうまくイメージ的に表現している。生活的なリアルさがありながら、70%以上を占める諧謔精神が、生きている。
【「眩暈」高村綾】
「僕」の実存的なイメージから生まれた幻想曲。筋はなさそう。自己憎悪。愛されることへの拒否感。白亜の塔への逃走など、イメージを追っていけばかなり理屈がつきそう。「やおい」小説で鍛えたようなエロイ描写力が生かされている。孤独に浮遊する自己喪失的な存在感を表現したかったのか、器用である。存在の希薄感を語りながら、存在感が強く出ているというハチャメチャ感もある。
【「Change」真愉】
いじめの標的になった話から、しばらくすると突然、他の人にいじめが移転し、私はいじめられ役から抜け出せる。いじめられる対象が次々と変わっていくらしい。構成がしっかりしていて、読んで気持ちがいい。形式に敏感な感性をしており、頼もしい。
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