「文―BUN」第4号・立命館大学文芸創作同好会(1)
【「Fatal Defect」村上哲太郎】
私は、彼女を絞め殺す。逃亡したのち、ホームレス集団に紛れ込む。そこで、私の犯行を知ったホームレスの老人が懺悔をしつこく勧める。そこで老人も殺す。そのあと私は母親おも殺していることを読者に知らしめる。そして、自死を暗示して終る。死体が4つの話。新聞記事をコラージュしたような作品である。新聞記事と異なって文芸的なのは、老人が神をもちだすあたりであろう。現代の多量な情報が作品を生み出したといえそう。ニュースへの感受性が表現になっている。エネルギーがでている。ただ、現代の事件報道は、同じネタを幾度も大げさにして伝える。増幅作用が激しいことは事実。事件性で言えば、横溝正史の「八つ墓村」は、何十人という村人が殺された実際の事件がモデルになっているという話しを耳にしたことがある。今なら大騒ぎであろう。ただ、当時、情報量が少なかった。
【「その道中」柴崎塔人】
これは、事件性がまったくない。新幹線の座席に座って、その現象についてあれこれ思いをめぐらす。人によって生まれる芸術の本質と独立性、偶発性を論じる。受験目標と結果への見解をのべるあたり、学生らしい視点がある。要するに座席にすわったまま、これらを材料にこれだけ描くのは、結構むずかしいものがあるのに、よく話を展開しきっている。
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