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2007年3月13日 (火)

単行本「うたかたの記―明治の村医者・脩平伝」森當著

「うたかたの記―明治の村医者・脩平伝」(武蔵野書房)は、幕末から明治にかけ、地域の村の医師として尽くした作者の先祖の伝記だという。

 常に農村の庶民の生活から離れなかった主人公の生涯を地道に描く。病院という名称が幕末から明治にかけて生まれたという当時の史実などもわかり、物語というより生活史の興味も引く。
 
小説的な展開が面白くなるのは、後半部からで、脩平夫婦は子ども出来ないので、継母のもとにいた「あさ」という少女を養女にもらい、やがて栄太郎という婿を取るが。しかし、ボタンの架け違いから栄太郎は身ごもった「あさ」を置いて家出してしまう。子を産んだ「あさ」は、それから幾年かして亡くなる。この「あさ」をめぐる物語がこの本の核になっている。後になって栄太郎は台湾にわたり駅長になるまで変転する。淡々とした筆致がかえって読者の想像力と共感を呼ぶ。アマゾンのレビューに、同様の感想を記入した。

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