「婦人文芸」83号作品紹介(2)
【「ヌブーさんの舞踏会」菅原治子】
1950年代のフランス留学時代の話。前号の82号で「屋根裏の少女」では、洋裁学校での朝鮮人の学友とのエピソードを述べている。小味な短編であった。今回は、フランス人の舞踏会に和服姿で出席し、ただひたすら時間の経つのを願って、次々と変わるパートーナーとダンスをする話。こいうのは、社会生活への訓練にもなっているのか、気疲れのする状況がよくわかり面白い。終わりに、妹が疲れて先に居眠りをしているところで終えるのが、象徴的でうまい。
【「カルチャーショック」中村翔】
戦後に、長男が戦友を家に泊まらせる。関西からやって来た人だが、それが関西人らしいサービス精神旺盛で、「あかしや・さんま」のようであった、という話。印象に残ることは、なんでも読ませる話になるものである。
【「心めぐる旅」斉田陽子】
肝臓がんが出たり消えたりする状況にある筆者が、養護施設に入ったので、見舞いに行くが、90歳を越えた叔母は、親しかったにもかかわらず、誰だかわからない。友人のTさん家族の話などを交え、時の流れを強く意識する領域からの思いが語られ、肝臓に再度がんが発生したこと記して終る。エッセイだが、タイトルそのもの。生きてきた道を壁画にしてみるような精神の遍歴を描いた小説にも読める。
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