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2007年2月16日 (金)

藤田東吾著「月に響く笛・耐震偽装」を買う

この本は、秋葉原の書泉ブックセンターで、在庫があることを期待しないで、入口の受付で、「こういう本なんですけど、取り寄せを頼むのは?」と書名を伝えたら「ああ、これはあります」と、すぐ持って来てくれたので驚いた。持ち歩いて、空き時間があると読んでいる。

 まだ、半分程度だが、これは面白い。しかも、貴重な記録である。イーホームズの藤田東吾社長というと、おそらく何か会社がよくないことをして、有罪になった人程度しか知らないであろうが、まず、そのことは忘れて、この本は読むに値する。画期的な意味を持つ本だ。日本の官僚の実態をリアルに冷静に観察している。「耐震強度偽装事件」の当事者というと、なにか際物めいた印象をもつかも知れない。しかも、官僚システムの被害者である立場から、その経験を語れば偏向に満ちて、恨み文句の続くものと思いがちだが、実に冷静に観察がなされ、著者の姿勢に揺らぎがないので、一貫して論理的である。(それに同感するか、しないかは別にして)。
 
 おそらく著者は当初、官僚の本質に怒りに怒ったであろうが、それを鎮めてよく整理分析しているのに驚く。かつて小泉政権のもとで、田中真紀子外務大臣を追い出した官僚の力学と実力がどのようなものであるか、知ることができないが、これを読むと「なるほど、こういう力学のものか」と論理的に類推できる。
 
 序文に、本来はこの本は、文芸春秋社か出版されるはずのものであったが、アパの耐震強度不足の問題を削除しなければ、出版できないと断られたそうである。アパの強度不足は、すでに経営者も自治体も認めている。現在なら文春でも出版したかもしれない。運命のいたずらか、数奇な運命の書である。

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