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2007年2月19日 (月)

藤田東吾著「月に響く笛・耐震偽装」を読む

やっと読了した。読みはじめのときは、アパの建物の耐震不足の公表を待てば、この著作は文芸春秋社から刊行されたかもしれないと、思ったが、最後まで読み通してみると、それは順序が逆で、時系列でみると、この本が出たためにアパの問題が世間に公表されたと解釈できる。政治と政策の社会的構造がよくわかる。
 とくに、この事件を報じたマスメディアには痛烈な視線がそそがれている。メディアが、事実をそのまま報道することを、第一義にしていないこと。大衆の思いたい方向に報道を単純化し、悪者を簡単に作りたがることなどは、多くの人が感じていることであろう。また、大衆はニュースを娯楽として読むという傾向から、面倒な説明を理解したがらないで、解りやすい判断を求めるという傾向も、背景にある。
 耐震強度偽装事件の実情を記録した貴重な著作である。
 これは、文学的に読んでも大変読み応えのある作品で、お勧め本である。特に、逮捕され拘留された時の心境は、切迫感に満ちている。この事件の端緒は、姉歯元設計士の奇妙な性格と発想法から生じたものだ。その被害者である藤田社長の端正な思想と人間性を比べると雲泥の差がある。しかしどちらも、同じ人間なのだ。考えさせることが多い。

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