詩集「やわらかい旋律」著者 井手ひとみ・より
作品 「棒」を読んで 江 素瑛(投稿)
「棒」 井出ひとみ
きっかけは何でもよかった/このたいくつな/ときをとめられるなら/なんでも/しよう//めもりのはいった/棒をのもう/きょうは一cmのもう/明日は二cmのもう//曲芸のように/のんで/一m五十七cmのんだら//わたしは棒になる//細長い/墓標になろう/一cmきざみに/線のはいった/なんでもない/白木の/棒になろう/なまえのない/一本の/棒になって/地面に/直立する
井出さんとは、二回ほどお目にかかっている。最初の出会いは、彼女が、「詩と思想」誌に映像時評を書くために、映画を見に行くところであったようです。後でわかったのです。バス亭で私の後ろに並んでいる彼女は、私の落としたメモ用紙を拾ってくれたのです。どうして名刺を渡したのか、第一は、なにか書いていると伺ったことからのように思う。第二は、女性だから、婦人科医は役立つことがあれば、と。しかし、何か記憶に残るものがありました。「詩と思想」詩人の新年会で二回目遇った時、お互いに驚きました。これは運命というものか。
美形で、柔らかい顔立ちの彼女ですが、その内に芯の強さを秘めていることが、この棒の詩に良くあらわしています。人の一生には沢山の退屈さに耐えなくてはならないことがあります。細長い棒のように意地を張って直立し、それに屈しない彼女の姿なのでしょうか。
| 固定リンク
コメント