詩人・原かずみ作品「廃墟守」を読む
それは呪われるべき絆なのか? 江 素瑛・投稿
多摩川の流れる地方に住んでいる、原さんは、川の美しい水影の裏に、潜むさまざまな生物の姿を詩の原点にし、社会問題点を考えさせられる。
絆という束縛は、親子関係が成立している以上は避けたくても常に付きまとうものだ。単親家庭は単親家庭を生み出す。なんと悲しい絆だろう。
「廃虚守」
穴だらけの部屋は
朽ち果てた神殿のようにも見える
廃墟のようにみえる神殿の片隅で
(中略)
母と娘はすれ違った朝を迎え
たがいに目をそむける
母は儀式のように
円いテーブルに朝食を並べ
冷ややかな舌に祝詞をのせる
(中略)
出口を探して
娘は
ある日
丘を降りていってしまった
(中略)
娘は
母となってもどり
また神殿の片隅で
朝をはじめる
幼いいのちを抱いた
新しい守人は
蜂の巣のような神殿に
母と同じ
細い朝餉の煙を上げる
原かずみ 詩集「オブリガート」(土曜美術出版販売)より
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