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2006年11月23日 (木)

「照葉樹」第2号(福岡市・櫂歌書房)

「【「星垂る飛ぶ」垂水薫】
視力を失ってしまったか、失おうとしている段階の女性が親を捨て? 夫と暮らし、子を得るが、それも独立。夫に愛人が出来たことで、離婚し、蛍のいる川にきて、その気配を味わう。そのいきさつが、独白で語られる。人生は走馬灯の如し、という感覚を、幻想化し、具体的に物語化してみたように読める。短い小説の中に、長い人生の物語を読んだような、読後感を与える濃縮技術に特徴を感じさせる。テクニシャン。

【「夏トカゲ」垂水薫】
クラスのガリ勉強タイプの中学生と、ツッパリ系の同級生が、なぜか秘密の空き家を見つけ、トカゲを飼うことになる。荒れた家庭のつっぱりと、普通の家庭のガリ勉との心の通いあう手法が、手順よく描かれる。作者が小説とはこうでなければならないという、哲学の存在を感じさせる。それとは、関係なく、トカゲの描写が秀逸で、魅了される。おそらく対象物の細部を描くのに、趣好を持っているようで、この才能が今後の作者の独自性と飛躍を予感させるような気がした。意識的な鍛錬を期待したい。

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