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2006年9月13日 (水)

同人誌「創」第1号作品紹介

同人誌    「創」第1号(名古屋市)発行日=060901
【「翔んじゃった」朝岡明美】子供が結婚し、夫婦だけの生活になった主婦が、それなりに新しい生活をするために、夫と顔を付き合わせる暮らしを離れ、旅行をしたり、合唱団に入ったり趣味で交際を広げる。合唱コンサートに友人、娘夫婦と夫の姿が見える。ささやかな飛翔を語る。読後に夫の内面がちょっとばかり気にかかるのが、ミソといえばミソ。
【「ともしび」渡邊晴美】出張で行った町の夜、ラーメン屋台に立ち寄る。屋台の親父は不愛想だが、なにか事情があるそう。話を聞くと阪神大震災で、家族と中華料理の店を失い、孤独な再起をはかっているところだとわかる。掌編なので、説明は足りないが、スポットライトをあてるように、被災者の心情を偲ばせる書き方でなかなか印象の強い作品。
【「括りの糸」安藤敏夫】戦後の混乱期が過ぎた頃の時代であろうか、大会社のサラリーマンをしている主人公が、娼婦の少女と恋愛感情を持つようになる。少女は有松絞りと三浦絞りの浴衣地をつくる特技をもっていて、商売の暇を見つけては、織っている。やがて、少女は行方を探していた親に見つかり、実家に帰る。男が定年を過ぎて、関西に行くと、有松絞りを継承しているその女に出会う。何事も関係に人情が豊かであった時代をしのぶような話。

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