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2006年8月19日 (土)

同人誌・小冊子 作品紹介 (作者名敬称略)

「文―BUN2号(京都・立命館大学 発行日=060701

【「石への想い」村上哲太郎】予備校生である「僕」は、勉学にいそしむのであるが、それが唯一の社会との繋がりであると感じられる中で、次第にか、あるいは突然にも思える様子で「剥離」していく。自分の存在と人間全体の存在の卑小さと、捉え難さ。そして、あるとき下宿家に出現した石があった。社会的には成長することを求められ、その外面的証拠として学歴や職歴を示し、常に所属と状態を明らかにしていなければならない。それに較べ、無言でただ存在するだけの石の落ち着きは、どうだ。石になってみたい気もする。絶対的で純粋な存在への憧憬を語って、現在の自己を描く。共感できる掌編。同じ石でも古代からの巨石とか山中の巨岩が存在するのだが、ここでは掌中に入るほどの石ころであるところがミソで作者の現在を表現しているのかも知れない。何をもってどう語るかの基本が抑えられていて、地味ながらよい作品である。

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