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2006年6月20日 (火)

鶴樹の「肉体の変奏」-21-

 人間だって動物だ。ただ生きるだけで、何が悪いというのだ。理想だとか、役に立つとか、立たないとか、くだらないこと考えて勝手に苦しむから、博士のようになってしまうのだ。おれは博士がノイローゼになっているのがわかった。難しい理想などというものを勝手につくりあげて、出来もしないことを、無理にやろうとするから、そうなるのだ。

とにかくこの医師のいうことを気にしていると、じつに疲れる。おれはばかばかしくなって、また床に寝ころんだ。外の散歩(といっても、ほとんど草や樹の皮、新芽などを食うためのものだが)の後、一眠りしたくなる。ゴリラの身体というやつは、無用なことをしないように出来ている。食えば寝る。全身にそれで満足感が伝わってくる。人間からすれば、怠惰なのだろうが、不満がなくなるというのは、気持ちを和ませる。おれの意識がそれに馴らされていくのがわかる。

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