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2006年5月18日 (木)

鶴樹の「肉体の変奏」-4-

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 ことしの春ごろから、由美は月に一度箱根の仙石原ホテルに一週間ほど滞在し、テニスやゴルフを楽しむようになっていた。もちろん、最初はおれが一緒だった(たしか提案したのもおれだったはずだ)。が、仕事の都合でそうそう付き合っていることはできない。あとから行くと約束したものの、守らなかったことがしばしばあった。

 今月はやっと仕事のやりくりがついて、おれは由美のいるホテルへ行った。

 午後の四時過ぎだった。駐車場にはおれのシトロエンがあった。まだ、テニスでもしているのだろうと、フロントでキイをもらおうとしたところ、彼女は五階にとった部屋にもどっているという。

 エレベータが降りるのを待っているとき、フロントのホテルマンが何気ない動作で、素早く電話をしているのがチラッとみえた。部屋の前に行ってドアをノックした。しばらくしてドアが開き、由美がぼんやりした表情で立っていた。後に若い男が立っている。

「たまたま神野さんが、こっちにくる用事があるというので、東京から車の運転を引き受けてくれたの」

 言い訳をする由美は、どうしてこんなに事態になったのか信じられないといった風だ。その言いまわしの語尾もはっきりしない。

「ええと、あなたには以前に……」

「ほら、水戸産業の開発部長をされている……。取手の土地買収のはなしを紹介してくださった会社の……」

 由美は、肚をきめたようで、説明しながら部屋の窓を開けた。こもった空気が、冷たい風に吹きはらわれ、三人の気分を落ちつかせた。

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