同人誌「季刊遠近」38号(東京)
「久保田正文著作選/文学的証言」(大正大学出版会:8,820円)が出版され、その出版記念会の様子がある。「文学界」同人誌評を長くしていたので、文芸評論家の勝俣浩氏が講演を行っている。久保田正文の住まいの近くに、文芸評論家の浜賀知彦氏が住んでいて、二人が元気な頃は、近所付き合いがあったようだ。
たまたま、自分は浜賀さんに用事があって、訪問することがあったので、この雑誌を持って行って見せたら、「ほう」と興味をもってみていた。作品を発表している難波田節子さんの名を見つけて、「まだ、やっているんだね」と言っていた。浜賀さんの蒐集している昔の同人雑誌に彼女の作品が掲載されているから、記憶しているらしい。
浜賀さんは、長年、京浜南部の文学活動の歴史となる同人誌を蒐集しており、戦後の労働運動の激しいさ中の同人誌や詩集を集めてある。それが「東京南部サークル雑誌集成」(不二出版、全三巻付録・別冊揃えで68,000円)となって、このほど編集復刻された。
浜賀さんは、この貴重な原本を地元の大田区の図書館に寄贈しようとしたら、断られたそうだ。「だめだね。文化的な価値がわからない」と落胆していた。自分は「自治体の図書館は古い書籍を廃棄したりしているので、ひとつ場所に置くのは考えもの。災害などでも失われるリスクが高い。民間の個人に分散して保管したほうが良いのですよ」とかいっていたものだ。
その資料の中には、安部公房が芥川賞を発表したあとに、同人誌に発表したばかりの詩作品の名前を抹消し、それを受け取った友人が、また安部公房と書き加えているものなど、面白いエピソードに事欠かない。
浜賀さんは1昨年だったか、ガンの手術をして体力を落としていたが、最近は元気を取り戻している。この集成が刊行されて、ひと安心しているようだった。入院中に見舞いに行くと、そのたびバカチョンンカメラでその人の写真とっていた。その後、麻酔の影響で幻覚症状が強く出たといっていたので、記憶が信用できなかったためらしい。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)



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