(紹介者・江素瑛)
台湾の殖民地時代、制圧戦争と政治の要因とは別に、本当の教育者として、志賀先生と生徒の真情の交流を表現した詩である。統治者長官らの傲慢な態度に恐怖心をもった台湾民衆の間に、教育者としてのあるべき姿を示したその姿に感銘をしている。
子供が言うこと聞かない時「警察が来るぞ」と、大人がそう言って驚かせるほど、警察が怖いのだ。その時代にとくに下層官史、警察などの虐めを心痛めながらも、人と人の暖かい付き合い、尊敬しあう志賀先生のような在駐一般日本人は、普通に存在した。
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代用教員志賀先生 張建墻
もとは国事を我が事として奔走し/大学にも教えていた先生/輝かしい行く先をふり切って/台湾の片田舎は大甲のまちへ来て/代用教員でいゝからと/小学の先生になったわよ なったわよ/立居振舞がねんごろで/人を人としてあつくつき合ったので/土地の人がこわがることもなくなった/この身分の低い志賀先生は/あるいは身を以て新付の民と共に暮す/お手本をつくっているのではないでせうか
何時も礼儀正しくへり下って/どなたの挨拶にも叮嚀なおじぎ/ひまを見つけては家庭を尋ね回り/病気の子には親身なお見舞/お話の通じない子らは合点せぬから/授業はさとるまで手をつくして/おろそかにせず うむことなく導き/ 腕白な子もついには根まけして/よく言うことを聞くいゝ子になった/先生は生徒を我が子の様に教えた人/入学勧誘にくたびれる位に話しても/出すか出すまいかとためらう婆さんが/子供を打たない/親切に教えてくれる志賀先生なら/孫が頼めると言うほどに/先生は家々に任せられる人
此のまちが住み良いなのか/いや、台湾の何処も同じなのに/学歴がなければ任官されない/任官されたらえらくなって他処へ転勤されると/御立派な学歴をかくして/何時までも皆さんと御一緒になりたいと願う/先生は愛を植えつけてこの地に根付いた人
二十六年もの長い間心血を注いで培うた/幼児らは星のように繁く/思い思いに四方八方に散らばっていても/古里に帰る日があれば/訪ねてまた語らわうと同じ思は一つ/先生も懐かしい我が家の一人
人は誠にこたえるという言葉を/証して見もせよとばかり/老も若きも悲しんでお柩を送って行く/長い長いお弔いの行列/誰か身空寒い教師を軽んじませうか/鉄砧山のふところに抱かれて永眠する先生の/王侯にもたぐわれる様なおくつき/碑にきざみ、語りつぎ言い傳えて崇められる/先生の教の大きな力に思を致したら
張建墻詩集「赤道と太陽」(国立台湾文学館)より(08年7月 台湾台南)
(参照:詩人回廊「江 素瑛の庭」 )
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